プチ起業(ママ起業)が、非正規雇用問題と繋がっているけど、何か?

今回は、数日前からバズっているブログ記事を私なりに批評してみる。


プチ起業、ママ起業が、非正規雇用の問題とつながっているということ|柴田朋子~キャリアデザインでHAPPYになろう~



ブログ筆者の問題提起は、「安易なプチ起業(ママ起業)は、業界の値崩れを起こし、その業界で真面目に働く人たちの首を絞めている。」というもの。

理路を簡潔に表すと(ママ起業の場合)
旦那に収入がある⇒利益を気にせず起業⇒安価な商品・サービスを提供⇒業界の値崩れを起こす⇒非正規雇用やワーキングプアを生み出す一因になる。


彼女の主張は、「安易なプチ起業(ママ起業)は、その仕事でご飯食べている人の邪魔となる。また、自分の価値を不当におとしめることでもある。起業するならしっかりと価格をつけるべき」。

この論は、論理的にも正しく、節義的にも正しい。共感する人も多く、至る所でシェアされている。


私はこのブログ記事を読んでどう思ったのか。
「正しいけど、時代の趨勢は止められないよね」。


ブログの筆者は、プチ起業を例に挙げたが、それなりに大きな会社がそれ以上に安く商品・サービスを提供している例もある。たとえば、「ココナラ」がそうだ。ここは、ロゴやイラストなどを500円で発注できるマッチングサイトである。

実は私、ここのサービスの愛用者である。
校正やイラストをお願いすることが多々ある。また、半年前に立ちあげた新規事業のロゴもここで発注した。「ロゴを500円で発注するなんて、なんて奴だ」とデザイン業界にいる人たちは怒るだろう。私もデザインに携わっているので、その怒りは理解できる。ココナラのサービスは、業界の人から見たら、「価格破壊の象徴」に映るだろう。

私の知るデザイナーも、このサービスに対して、また受注する者と発注する者を卑下していた。しかし、残念ながらそれが自由競争というものなのだ。自由競争は、法に触れない限り、論理的にも正しさも、節義的にも正しさも通用しない。そして我々はその環境下に身を置き商売をしている。

私は商売をこのように見ている。「商売とは、価値あるものをゼロ円に近付けるもの」。私はそれを「企業努力」と呼ぶ。一昔前は高くて買えなかったものが、技術革新などにより庶民でも買えるようになる。これが商売の本質なのだ。「価値あるものは高くあるべき」などという価値観では、いつか競合に抜かれる。

それに、私は納品されたロゴを結構気に入っている。
ロゴのような抽象度の高いものは、消費者から見て、価格の“高いロゴ”と“安いロゴ”の区別がつきにくい。もし、「安い価格でロゴを提供するのも発注するのも、けしからん」と唱えるのであれば、高いロゴを選ぶべき理由(価値)を消費者に伝えなくてはいけない。それができなければ、消費者は自然と安いほうへ流れていく。当たり前である。

今回の問題提起である「安易なプチ起業(ママ起業)は、業界の値崩れを起こし、その業界で真面目に働く人たちの首を絞めている」を私なりのビジネス論点で語れば、「真面目に働いて適正価格で商品・サービスを売る人たちは、安く売る人たちと差別化できず、後者にお客を取られている」と言える。

「安く売るな」ではなく、適正価格で売る人たちがちゃんと売れるよう努力を呼びかけ、知恵を絞るほうがずっと建設的ではないだろうか。ブログで語られている問題提起は、プチ起業家を論理的・節義的に非難しただけで、おそらく何も生まないだろう。

私なら、こう呼びかけるだろう。「あなたの業界でも超安価でサービスを提供するプチ起業家や中堅企業が必ず出てきます。その対策はできていますか?」と。