「誰もが幸せを望んでいる」って本当?

クリティカルシンキング(批判的思考)の所為か、それとも私の根性がひねくれている所為なのか、ずっと前から「誰もが幸せを望んでいる」という定説を疑っている。というか、嘘だと思っている。人は幸せなんて望んでいない。望んでいるのは「納得」である。例を上げながら解説したい。

今、一つの社会問題としてシングルマザーの貧困問題がある。「離婚=不幸」と言い切るつもりはないが、DVや不倫など、特に夫婦間に問題が無いのであれば、結婚生活が続くに越したことはないだろう。離婚と貧困が密接にかかわっている事実から見ても、離婚率を下げることは貧困問題を解決する一つの方策でもある。

さて、統計学的に「見合結婚」と「恋愛結婚」では離婚率が4倍違うのをご存じだろうか。見合結婚のほうが低いのである。ではここで、全国民に恋愛結婚を禁止して見合結婚にすることいった方策が打ち出されたら、あなたはどう思うか。まず、間違いなく反対にあう。自由に結婚相手を選びたいとか、人権侵害だとか色々批判はあるだろうが、一言で表せば「納得」できないからである。

では、こうしよう。
離婚率5%以下のベストパートナーとマッチングしてくれる人工知能が開発されたとする。あなたのDNA情報やその他個人情報を提供することが義務化され、人工知能が導き出す時期に導き出した相手と結婚することが法令で決められたとしたら。念のために言っておく。統計的に見て、自分で選んだ場合、30%以上の確率であなたは離婚する。しかし、人工知能に任せておけば5%以下で済むのだ。あなたはこれに賛成だろうか? ぶっちゃけ、反対のほうが多いだろう。いやむしろ、先の見合結婚よりも拒絶反応を示したのではないだろうか。見合結婚のほうが、お見合いした人の中から選べるだけ、まだ納得感がある。

私は「功利主義者」(最大多数最大幸福)である。その立場からして、人工知能によるマッチングは実現して欲しいとすら思っている。ただしかし、功利主義者の視点から人の世を見渡してみると、人は幸福ではなく納得を選んでいるんだなと、日々の生活の中で気づいた。人の世は、「最大多数最大幸福」ではなく、「最大多数最大納得」に落ちつくのだ。

「納得」で重要なのは「選択権」である。
自身で選んだのなら一定の納得感がある。それがたとえ不幸な結果になろうとも、他人に選ばれたり選べないことに人は我慢ならないのだ。だから、多くの国では自由恋愛は受け入れられている、民主主義も同じだ。

民主主義は、私から言わせれば納得主義である。国民全員に選挙権を与え、みんなで選ぶ。そうすれば大勢からの納得感が得られる。この制度は、「最大多数最大納得」にほかならない。もし、民主主義に代わる制度を作るとすれば、民主主義以上に納得感が得られる制度でなければならないだろう。

というわけで、人は「幸せ」以上に望んでいるのは「納得」なのである。


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