「愛国心」を叫びながら、反日行為をする人々

ネット民による個人攻撃が後を絶たない。
最近では、NHKの番組に出演した貧女子高生に対して「貧困ではない」と糾弾し、実名と住所を晒して誹謗中傷を繰り返した。また、元朝日記者の娘(当時17歳)の名前や顔写真、学校などを晒した脅迫事件では、被告に賠償命令が下りた。このように、個人や親族を対象にした「私刑」の例は、挙げはじめたら枚挙に暇がない。特に、ネトウヨによる「私刑」が目立つと思うのは私だけだろうか。先に挙げた例も、慰安婦問題に端を発しているし、NHKはネトウヨが嫌いな放送局でもある。ネトウヨに限らず、このような卑劣な「私刑」は許されるべきではない。


なぜ、「私刑」は許されないのか。



反日行為だからである。



ネトウヨは愛国心を掲げ、反日と思われる団体や個人を「私刑」によって叩いているつもりだが、「私刑」自体がもはや反日行為なのである。名著『学問のすすめ』から読み解いてみよう。

『学問のすすめ』(著者 福澤 諭吉 訳 齋藤 孝)

国民が政府にしたがうのは、政府が作った法にしたがうのではなく、自分たちが作った法にしたがうということなのだ。(中略)
人を殺すものを捕えて死刑にするのも政府の権力による。盗賊を捕まえて刑務所に入れるのも政府の権力による。訴訟を裁くのも政府の権力による。乱暴や喧嘩を取り締まるのも政府の権力による。これらのことについて、国民は少しも手を出してはならない。 もし心得ちがいをして、自分で勝手に犯罪者を殺し、あるいは盗賊を捕えてこれを鞭打ったりすれば、国の法を犯して、勝手に他人の罪を裁いたことになる。これを「私裁」という。許されないことである。(中略)
もし、国の政治について不平なところを見つけ、国を害する人物がいると思ったらならば、騒がずにこれを政府に訴えるべきであるのに、その政府を差し置いて、天に代わって自ら事をなすなどというのは、商売違いもはなはだしい。 結局、この類の人間は、性質は律儀であっても、物事の道理がわかっておらず、国を憂いることは知っていても、どのように憂いていいのかがわかっていない者である。(中略)p77-84

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

 

 

つまり、「個人を特定してみんなで叩こうぜ」という行為は、「日本って、罪人を裁けないクソ国家だよね」という意思の表れであり、法治国家及び民主主義を否定する行為なのである。これを反日と呼ばずして何と呼ぶ。不満があるのなら、法や政府に訴えるべきである。

前々から私は「ネトウヨは日本を貶めている」と言及してきているが、その理由の一つがこれである。分かりやすい例としてネトウヨを挙げているが、「私刑」を行う者全員に言えることだ。愛国心があるのであれば、こうした「私刑」はするべきではない。

今回、元朝日記者の親族への誹謗中傷や脅迫に対して賠償命令が下りたことは非常に意義があることだ。ネット民から「私刑」を受けた者(今後受ける者)にしたら心強い判例だ。証拠をしっかりと収めて、ちゃんと法に訴えよう。それが善き国民というものである。