絵本『おおきなおおきなおいも』の感想・表現技法

妻から絵本『おおきなおおきなおいも』を薦められました。なんでも、子どもの頃夢中になって読んだ絵本とのことです。私も読んでみたところ、ほかの絵本にはない表現技法が施されており、驚きました。

どんな技法が使われているかを説明する前に、『おおきなおおきなおいも』のあらすじを一度お伝えします。

ある幼稚園の話です。園児たちがおいもほりに行く予定でしたが、雨が降ってしまい中止に。楽しみにしていた気持ちが収まらず、園児たちみんなでおいもの絵を描きました。それも大きな大きな絵です。その絵は、紙から飛び出し、船になったりきょうりゅうになったりします。その後幼児たちが料理をして、みんなで食べて、最後はガスでおなかがふくらんで宇宙旅行までします。

絵本と言うのは、あまりにも現実離れした表現をする際、動物に仮託したり、今とは離れた時代にしたり、夢落ちにさせる場合が多いです。今回のようなに、巨大な食べ物が出てくる例で言えば、『ぐりとぐら』があります。巨大な卵を見つけて、料理してみんなと分け合います。構造は、『おおきなおいも』と同じです。

なぜ、動物に仮託をさせたりするのか。理由の一つに、現代社会を背景にした絵本で、あまりにも現実離れな話を描くと、「これってあり得ないよね」とツッコミが入ってしまうからです。動物の世界であれば、別世界の出来事のため、そういったツッコミが入ることはありません。

『おおきなおおきなおいもは』は、絵本を読む等身大の園児を登場させて、園児目線で描いています。しかも、巨大なおいもが出てきて、姿かたちを変えます。この手の話は、普通なら動物に仮託させます。

では、どうやってリアル世界と空想世界を融合させたのか。ここに私を感嘆させた表現技法があるのです。

はじめのページに、保母さんと園児たちが見開きで書かれていますが、この時の保母さんと園児たちの身長差は、現実的に表されています。その後、園児たちが描いたおいもの絵を数ページにも亘って保母さんに見せるシーンが続きます。この時には、絵を見て驚いている保母さんと園児たちの身長差は、現実離れしているのです。この数ページに亘って描かれている“おいも”が現実と空想の世界の境界であり、二つの世界を繋ぎ融和させているのです。いつの間にか読み手は、現実世界から想像の世界へ誘われているわけです。

この表現技法はすごいなと思い、妻が子供の頃に夢中になって読んだのも頷けました。

 

 

おおきなおおきな おいも (福音館創作童話シリーズ)

おおきなおおきな おいも (福音館創作童話シリーズ)

  • 作者:赤羽 末吉
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 1972/10/01
  • メディア: 単行本