「マシュマロ実験」の再現実験が突き付けた残酷な現実

マシュマロ実験をご存知だろうか?
スタンフォード大学の心理学者・ウォルター・ミシェルが1960年代後半~1970年代前半にかけて実施した実験である。4歳の子ども186人を被験者とし、自制心が人生に与える影響を調べた。

実験内容はこうだ。
子ども一人ひとりにマシュマロを1つ与え、「15分の間、マシュマロを食べるのを我慢したらもう1つあげる」と告げ、部屋から出ていく。マシュマロを食べずに我慢できた子と我慢できなかった子を分け、その後、追跡調査を行った。

追跡調査の結果、我慢できた子たちは後の人生で周りから優秀と評価されることが分かった。加えて、大学進学適性試験(SAT)の点数が我慢できなかった子よりもトータルスコアで210点も高かったことが判明した。この実験の結論はこうだ。「自制心のある子どもは社会的成功を収めやすい」。

だが、2018年5月25日、マシュマロ実験は覆された。
マシュマロ実験を疑わしいと思った研究者たちが、さらに大規模(被験者900名以上)な再現実験を行った結果、マシュマロを我慢できるかどうかは、子どもの自制心よりも、"子どもの社会的・経済的背景”のほうが影響していることが分かったのだ。

どういうことか噛み砕いて説明する。
再現実験をする中、我慢できない子たちは親の経済環境が悪いことが分かった。貧困層の子どもは、「我慢したら○○をあげるね」といった類の約束を親からされた経験や守られた経験が少ない。そのため、マシュマロ(今、目の前にある快楽)を優先する行動を取ってしまうのだ。一方、富裕層の子どもは、大人は食べ物を所有するだけのリソースと経済的な安定性を持っていることを知っているため、喜びを先延ばしする行為が比較的簡単にできる。こうした背景の差から、貧困層は我慢できない子が多くなり、富裕層は我慢できる子が多くなるのだ。

再現実験した研究者はこう述べる。
「重要なのは子どもが3歳の時点における家庭の年収と環境であり、自制心の程度は経済的・社会的な不利益に勝るものではなかった」

これに似たの話は、日本でも横行している。
たとえば、「東大に入学した学生の半数は、ピアノを習っている」という言説だ。これもマシュマロ実験と同じである。習わせるだけの経済環境があったからであって、「ピアノが脳に良い」という意味にはならない。因果関係と相関関係を明記せず、読者に誤解を与える雑誌を時々目にする。たとえば、雑誌『プ○ジ○ント』とか。

話は少し変わるが、
中国では裏口入学が横行している。大学へのコネを親が持っている、または親がお金を包むことで、入学できる学生が一定数いるのだ。こうしたやり方に否定的な人もいるだろうが、中国の裏口入学はあからさまで分かりやすいだけであって、親の経済力が子どもの学歴に大きな影響を与えているのは、どこも同じである。

「努力して高学歴を収めた」と言う人もいるが、"努力できる環境”があったからこそ努力することができたのである。

私自身、学生時代は底辺学校の友人と遊んでいたため、彼らの家庭環境が複雑であることをよく知っている。ラリっている親、蒸発した両親、小屋に住んでいる兄弟、ここでは書けないetc。高学歴の友人と引き合わせてみたら、彼はこう言った。「俺は恵まれていることが分かった。努力とかそれ以前の問題だわ」と。

マシュマロ実験により、分かり切っていた現実がさらに証明された格好になった。「経済力と学歴には強い相関関係があり、これにより格差が生まれている」という現実が。

こうした格差を是正するならば、授業料を安くするなりしたほうがいいのだが、日本はその真逆を突き進んでいる。大学の授業料は年々上昇しており、貧困層が這い上がれる可能性はどんどん閉じてしまっている。若者が将来に可能性が見出せないのも無理はない。

 

 

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