「全文を読んだら問題ない」は、情報の切り抜きである

「全文を読んだら問題ない発言だった」という常套句を定期的に見かける。要は、「全文を読めば文脈上問題ない」と言いたいのだろう。で、私は一応仰せの通り全文を読むようにしている。そうしたらどうだろう。余計に問題発言だと確認に至ってしまう。一体何を持って「問題ない」と言っているのか。原因は分かっている。全文(文脈)の定義が違うからだ。

たとえば、政治家のAさんが同性愛について問題となる発言をしたとしよう。メディアが話の一部を切り取って「問題発言だ!」と騒いだら、支持層からは「発言の一部ではなく全文を読めよ。読んだら文脈上問題ないことが分かるから」と擁護される。つまり、全文とはその時の話を指しているわけだ。

私が定義する全文(文脈)とは、Aさんが過去にしてきた同性愛についての発言すべて含めている。取り上げられ時の話は、文脈の一部に過ぎない。これらを照らし合わせてみると、やはり問題発言という帰結にしかならないわけだ。

歴史観でも同じである。
たとえば、韓国が「日本は謝罪せよ」と主張してきた時、誰もが数十年に亘る“日韓のいきさつ”を前提に、「韓国の言い分はおかしい」と反論するはずだ。まさか、過去のいきさつを無視して、発言した時の全文だけを見たりはしないよな。

これと同じように、政治家なり誰かが問題発言をしたと思ったら、過去の発言もチェックして判断しなくてはいけない。それが全文(文脈)を読むということだ。その時の発言だけを全文として、「問題なかった」とするのは、まさに情報の“切り取り”なのである。

 

 

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