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同じ構造と矛盾

芦田真菜ちゃんが偏差値70超の名門中学に合格した。つい数年前まで「めっちゃ可愛い女の子だな。娘にしたい」と思っていた少女に、偏差値を抜かれてしまった私としては複雑な心境ではある。もう、真菜ちゃんとは呼べない。真菜さんと呼ぼう。

ニュース記事によると、真菜さんは1日12時間も勉強していたそうだ。「12時間って凄い」と思ったのと同時に、「人は12時間も勉強できるものなのか!」と驚いた。塾に通ったこともなければ、高校受験さえもまともにしてこなかった私にとっては、信じがたい事実であった。

先週、NHK番組『クローズアップ現代+』でも最近放映された『「稼げる大人」になる!? 過熱する受験競争』で中学受験が取り上げられていた。インタビューに応じた小学生も、「1日10時間勉強している」と述べており、実際に日本で起きている事象なのだと、馬鹿な私もようやく認識した。

真菜さんやTVに出ていた小学生たちを見て、私は感心しながらも、ある矛盾を自分の中に感じた。

私は何度が「長時間労働」について記事を書いたことがある。例に漏れず「長時間労働は是正せねばならない」といった趣旨のものだ。そんな私が長時間勉強をする子どもを見て「偉いな」と感じていいのだろうか。

子どもにとっての勉強は、大人にとっての仕事にあたるのではないか。もし、そうなら、私は矛盾を禁じ得ない。子ども長時間勉強を強いる環境や姿勢は、長時間労働を強いる会社や経営者と同じだからだ。

長時間労働がなぜなくならないのか。それは、長時間労働を評価する上司がいるから。長時間労働を止めると競争に負けるからである。収入がなくなるからである。

受験勉強も同じだ。

長時間労働がなぜなくならないのか。それは、長時間勉強を評価する大人がいるから。長時間勉強を止めると競争に負ける(いい学校に入学できない)から。そして将来稼げなくなるからである。

この二つは、構造が同じである。労働問題は、実は受験勉強からすでに始まっていると言える。

真菜ちゃんをはじめとした受験勉強をがんばった小学生たちの努力は褒めてあげたいが、それは労働問題に繋がると気づいたとき、複雑な気分になった。

 

★★★

 

音楽教室から著作権料を徴収する方向でJASRACが動き出している。今回の件には、私もいささか疑問は残るが、JASRACの大義名分「音楽を作った作曲家や作詞家たちにお金をちゃんと廻すため」は理解できる。

個人的な話だが、私は青春時代を國府田マリ子の歌に捧げてきた。四六時中、彼女の歌を聴いていた。私が特に好きだった歌に『長雨』がある。だが、彼女はニッチな存在のため、どこのカラオケにいっても『長雨」が無いのである。私は國府田マリ子にお礼がしたい。何万回も聞いた『長雨』を歌ってお金を落としたのだ。なのにそれが出来ないのである。「JASRAC、仕事しろ」と言いたい。

さて、私は以前から疑問に思っているのだが、「料理のレシピ」はなぜ著作権の対象に当たらないのだろうか。

知らない人のために説明しておくと、著作権の保護対象は「思想や感情を創作的に表現したもの」である。料理のレシピが著作権の対象ではないと言うことは、「レシピも料理も表現物ではない」と法律上見なされているということだ。その理由として、「レシピはただのアイディアであり、誰が作っても同じになるものは表現物ではない」とされているからだ(アイディアは、著作権の保護対象ではない)。そのため、今後どんなに独創的で革新的な料理が生まれようとも著作権では守られないのである。私的には、考えた作った楽曲が著作権で保護され、考えて作ったレシピが保護されないのは、整合性が合わないように思う。

もし私が一流のシェフに「あなたが作っているにはただの食べ物で、アートでもなければ表現物でもない」と言ったら、ブッ飛ばされるのではないだろうか。

「譜面→演奏」「レシピ→料理」は、同じ構造だ。
音楽から著作権料を徴収するのなら、料理からの著作権料を徴収するのが筋だろう。だが、本当にそんなことになったら困るし、実質上それは不可能だ。おそらく法律も「料理のレシピを著作権で保護したら大変だよね」という結論に達し、料理を表現物の対象から外したのではないだろうか。

自分自身、創作者を守りたいのか、守りたくないのか何だか矛盾する話ではある。

 

 

 

 

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