ラブドールが嫁になる日

私が小学生の頃、『世にも奇妙な物語』というTV番組があった。放送された話の中で、今でも印象深く覚えている回がある。それは、ラブドールを一人の人間として接している男の話だ。

その男はラブドールに名前をつけ、挨拶したり、話しかけたりしていた。そんな彼の様子を見ていた友人はきみ悪がり、ラブドールを捨てるように注意するが男は聞く耳を持たない。それどころか、大きなお世話だと言わんばかりに怒りをあらわにした。それだけ男はラブドールを愛していたのだ。

そんなある日、奇跡が起こった。ラブドールに命が宿ったのだ。彼女(元ラブドール)は自らの意志で歩いたり話したりして、見た目も振る舞いも人間そのものだった。私はTVを見ながら、きっと男は喜ぶに違いないと思ったのだが、予想とは逆に、男は彼女を見て恐怖した。最後はどうなったかはあまり記憶にないが、ハッピーエンドではなかったことだけは印象として覚えている。

20年以上の年月が流れ、同じくタモリのTV番組『笑っていいとも!』でリリーフランキーがテレビショッキングに出演していた時のことだ。リリーフランキーは、自分の彼女を連れて来たと言い、セット裏からラブドールを持ってきた。名前はリリカと紹介し、話しかけたりしてみせた。その様を見ていた会場の人たちはドン引きしていた。当然、TVの前で見ていた人たちもドン引きしたに違いない。

だが私は違った。『世にも奇妙な物語』の話が唐突にフラッシュバックして、「あーー、あの時の男と同じだーー!」と興奮してTVを見ていた。

「人形を彼女にするなんて、どうかしている」と思う人がほとんどだろう。だが、10年後、20年後はどうだろうか。人工知能が搭載されたラブドールが売り出され、彼女または嫁として一緒に生活する男性が増えているかもしれない。数日前、中国のとある企業が人工知能を搭載した人形を売り出した。将来的には、床の世話までしてくれるという。



私が20年前に見た『世にも奇妙な物語』の話は、20年後には『世にも当たり前な物語』になっているのかも知れない。